Sustainable
Tourism

子どもたちに、
答志島の未来をつなぐ。

鳥羽市答志町在住漁師

中村正伸 / Masanobu Nakamura

profile
1982年、三重県鳥羽市答志町生まれ。「市幸丸」でシラス漁を営む。「鳥羽ブルーオーシャンズ」を立ち上げ、答志島海洋クラブ部長、ベースボールアカデミー代表を兼任。3児の父。

2020年、鳥羽ブルーオーシャンズを立ち上げ

2020年に「鳥羽ブルーオーシャンズ」という団体を立ち上げました。主な活動内容は「答志海洋クラブ」と「ベースボールアカデミー」の2つで、鳥羽磯部漁協答志支所青壮年部、鳥羽市役所の職員など3040人のメンバーが集まっています。わかりやすく言えば、鳥羽ブルーオーシャンズは学校、答志海洋クラブとベースボールアカデミーは部活、さまざまなメンバーが先生という感じです。

答志海洋クラブのキーワードは、海×子ども

「答志海洋クラブ」では、小中学生に向けて、海に関するプログラムをしています。自分も漁師だし、島民の多くは漁業を仕事にしていますが、数年前から海藻が減ったりとか海が砂漠化しているような様子もあって、魚が獲れにくくなっているという心配がありました。だから次の世代を担う子どもたちにこそ、自分たちの海はどんな海なのか、現状を見て、知って、調べて、再生させていくことを一緒に考えてほしいんですよね。10年くらい前から地元のダイバーと子どもたちでいろんな取り組みもしていたのですが、2021年の8月にはダイビングスクールをやって、8人の中学生にライセンスを取ってもらいました。やっぱり自分で潜って見るのが一番なので、何度も海に入ってもらえたら、海藻や藻場のことがよりリアルにわかってくるはずです。あとは11月に、船での沖釣り、湾内でのアジ釣りにも行きました。そのときは2kgくらいあるイナダとかが釣れたんですけど、釣りは年間を通してできるので、その季節に地元ではどんな魚が釣れるのか、楽しみながら学んでほしいです。

人が集う拠点をつくる

2022年には、答志海洋クラブの拠点として、港のそばの建物の1階を整備します。水槽とか、釣り道具とか、10セットほどあるダイビングの機材とかを置いて、学校帰りに立ち寄れる学童クラブのような感じにしたいんですよね〜。リタイアしたおじいちゃんおばあちゃんが見守りに入ってくれて、昔の釣り道具についてちょっと教えてくれたりとか、気軽に人が集まれるような雰囲気の中で、多世代の交流も生まれてほしい。いま千葉の農村で生活しているという建築科の東大生が、次は漁村に暮らしたいということで、来年1年間休学して4月からこのプロジェクトをやってくれることになっているので楽しみです。

島の外からも、たくさんの人に関わってほしい

この78年ぐらいで、100人いた答志小学校の生徒は半分くらいに減りました。漁業をするには漁業権という問題があって、今日引っ越してきて明日から漁を始めるというわけにはいかないんですけど、従来のやり方だけにこだわっていたら事業を続けていくのは難しいです。なので僕も11月から21歳の若い見習い漁師を受け入れたりとか、個人的にできることにも取り組んでいます。答志島が好きなので、とにかく行動することが大切かなと。

ビーチクリーンとか街中のゴミ清掃とか、1時間くらいの簡単なボランテイアと観光を組み合わせたようなメニューも試してみました。鳥羽が好きとか、答志島が好きという方であれば、何らかのかたちで地域への関わりができたらうれしいかもしれないですよね。地元の人に感謝されるようなことって、ただ観光名所を回るだけよりも記憶に残る体験になるかもしれません。地方の課題を解決できるのは、そこに住んでいる人だけなのかと言うと、別に外からの力を借りても全然いいわけだし、いろんな関わり方を試してみたいです。

それから答志島には「寝屋子制度」があります。これは中学校を卒業した男の子が、寝屋親と呼ばれる世話係の大人のもとで共同生活を送ることで一人前の人間に育っていくという風習です。自分にも寝屋親がいます。思春期のときは、父や母だからこそ話しにくいことを相談したりもしたし、いろいろお世話になったので、次の世代にもつなげていきたいですね。これも答志島の子どもだけに限らないで、全国から寝屋子の島留学を受け入れようというふうに動いています。島民限定ではせっかくの寝屋子制度もなくなってしまうかもしれないので、柔軟に対応しながら島の文化を引き継いでいきたいです。

ベースボールアカデミーは、合同で部活ができる受け皿に

「ベースボールアカデミー」では、中学生が野球ができる環境をサポートしています。いま答志島中学校だけでは、チームで試合をするというようなことは難しいです。他にもそのような学校はあるので、いくつもの学校と連携して、合同チームを作れるようにしたい。少子化は簡単に止められないかもしれないけど、愛情を持って子どもを育てることはできるし、子どもにこの島で生まれ育ってよかったと思ってもらうこともできる。それは大人の役目かなと思います。

答志島の鍵は、子どもたちが握っている

答志島の財産は人間です。みんな自然に助け合うし、団結力があります。愛知県で5年くらい働いて戻ってきたとき、人の多い都会よりもはるかに結束力が高いよな、と感じました。特に子どものことに関しては、自分の子どもだけがよければいいという考え方をする人はいないし、誰の子どもに対しても温かな目線を持っています。子どもたちのためになることは、みんなが進んでやる。そこをフックにして動き始めることで島が活性化する可能性があるし、答志島の鍵は子どもたちが握っていると思います。鳥羽ブルーオーシャンズの活動の根っこにあるのは、そんな気持ちです!

2022/03/24

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