Sustainable
Tourism

海洋ゴミから、
未来が始まる。

鳥羽市鳥羽在住海洋プラスティックアーティスト

間瀬雅介 / Tadasuke Mase

profile
1993年、愛知県生まれ。海技士(機関士・航海士)として瀬戸内、日本沿岸、南極海を航行。 現在は海洋プラスティックアーティストとして活動している。2児の父。

冒険家になりたい

ずっと冒険家になりたくて、それはいまでもそうなんですけど、初めての冒険は中2のとき。自転車と釣り道具だけを持って、家から海まで8時間自転車を漕ぎ続けました。でも自転車で行けるのって、陸地がつながっているところだけじゃないですか。ほかの大陸に行くには、船に乗って海に出ないとならない。だから航海士になろうと思って、進学先を国立清水海上技術短期大学校に決めました。この学校は航海士と機関士という2つの資格が取れる学校で、「銀河丸」という航海練習船に200人くらいが乗って、エンジン整備とか運転技術などを学ぶんです。ずっと海の上で生活していて、1〜2週間に1回くらい陸に降りて、そこから急にお金が必要な生活が始まってしまうんですね(笑)。でもみんなお金を持っていないので、ヒッチハイクで移動したり、奢ってもらったりして過ごしていました。

航海士、イベント企画、通信の会社を経て、南極へ

卒業してからは船会社に就職して、瀬戸内、日本沿岸を航海していました。ただ「やっぱり冒険家になろう。日本丸とかは50億円くらいするけどそういう船を買おう。たくさん稼ごう!」と思って半年で退職して。そのあとイベント会社をやったり、とりあえず200万円を作って船を買ってイベントに付加価値をつけようとしたりするんですけど、僕、その船を3ヶ月で壊しちゃったんですよね(笑)。チーン‥て撃沈して、次はモノに頼るのはやめよう、何かサービスを極めようって思って、通信の代理店に転職しました。それにしても50億はまったく見えない(笑)。「じゃあクラファンだ。25万人から2万円もらえたら50億だ。youtuberになろう、そのためには尖ったネタを持てる自分になろう」と決めて、南極の生物調査に志願したんです。

海洋プラスチックの事業で、冒険の資金を作る

いや〜、南極はすごかったです。海が殺してくるんですよ、僕を。常に台風みたいな海域があって、ずっと大荒れで、56mの船が45度倒れるような揺れでまさに冒険。でもすごく面白くなっちゃって、海に出る魅力にとりつかれて7ヶ月後に帰国しました。そのとき24歳です。ここでまた50億円問題に戻るんですけど、既存のプラットフォームで考えてたら無理だなと思って。だから大きな軸で社会課題を解決できる事業を始めようと、海洋プラスチックマテリアル再生事業に目をつけて、←イマココという感じです。

価値のないゴミが、再び必要とされる資源に

航海すると、海の上にはゴミがほんとうにたくさんあるんです。何でこんなものが!?というようなものも含めていろいろ落ちているので、拾い集めて溶かしたら何かできるんじゃないなかとずっと思ってて。海洋プラスチックって社会から弾かれたものですよね。そこから社会に必要だとされているボールペンやランプシェードやデスクを作る。まったく価値がなかったはずの海洋ゴミから、陸の経済が作られて、再び新しい未来が始まるというか、不思議な循環が生まれるのが面白いです。

活動拠点は、漁師がセリに使っていた場所

鳥羽に制作の拠点ができたのは、浦村町で養殖漁業をやっている浅尾大輔さんのおかげです。海洋プラスチックにまつわる活動をするために、大量のゴミを置けたり、大きな音を出したりもできるような倉庫を2017年くらいから探してて、石垣島と和歌山とかいろいろ見てたんですけど、なかなか条件に合うものがなくて。2020年にたまたま参加した南伊勢のイベントに牡蠣を運んでくれたのが大輔さんで、いろいろ話したら伊勢志摩冷凍の社長の石川さんが持っている物件を紹介してくれた。そこからトントン拍子に話が進みました。その年末に大体改装が終わって、事業が始まりはじめたというところです。

海洋プラスチックの再利用は、時代のニーズ

主な事業内容は、海洋プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレン)を集めて、ペレット化して、廃棄プラスチック市場に卸すということです。世界中の企業が一斉にSDGsに取り組み始めたこともあって、海洋プラスチックから作られた素材を使いたい、使わなければ、というニーズが高まっています。海洋プラスチックというと、ペットボトルとかビニール袋が流れているようなイメージがあるかもしれませんが、いちばん多いのは漁具なんですよね。だから漁村に製造ラインを置いていくのは意味があると思うし、同時に流出を防止する手立ても考えていかなければならない。あとはゴミを集める、買う、売るという一連の仕組みを構築して、世界に広めていきたいです。

アトリエに集まる海洋プラスチックゴミ。多くは流されてしまった漁具
不純物と樹脂を分けるための比重分離機

必要なプラスチックの適量がある

ただ僕は、プラスチックを世の中から失くそうとは思ってないです。プラスチックはやっぱり機能的だし、経済を回すインフラとして必要な素材だと思う。だからいま余分にある量をならして行けばいい。新しいプラスチックをどんどん作らずに、海洋プラスチックを循環させていけば、ここがベストポイントだというところがあると思うんです。世界中で、決まった量の資源をみんなで分け合って使うようなイメージかな。プラスチックゼロを謳うような団体もあるし、確かにストローとかはプラスチックである必要はない。でもリアルにプラスチックがゼロになったら困ることも必ずあるはずなので、間になるような提案をしないと進まない気がしています。

何かを問いかけたい、表現者でいたい

日々作品も手がけています。例えばこの前は、針がなくて抽象画が描かれた文字盤が回る時計を作ったんですけど、この時計はある目印を覚えておくことで、自分だけが時間がわかるようになっている。自分軸で生きよう、自分の時間を生きようというメッセージを込めました。普通に考えたら使いやすいとは言えないんだけれど、こんなふうに概念を売るようなことが好きですね。常に何かを問いかけたい、表現者でいたいという気持ちはあります。

仕上がりをイメージしながら、さまざまな色の海洋プラスチックゴミを使って作品を制作

挑戦する仲間たち、集まれ!

最近は実験、実験、実験の日々です。立体的な作品を作るために、きれいに型から外せる剤を検証することが必要で、膨大な種類の中から最適なものを探している感じです。私生活では結婚してて、子どもも2人いますが、仲間がほしいですね〜。新しいことに挑戦している20代の仲間が周りにいたらいいなと思う。いま使っている建物は2階建てで、1階は作業場にして、2階をギャラリー&ビリヤード&バーという仕様にしたのも仲間が集まれる場所を作りたかったからです。冒険家ってひとりじゃなくて、プロセスを共有する仲間がいてこそ楽しいじゃないですか。

2階は交流の場。バーカウンターとビリヤード台が設えられ、お酒を飲みながらのトークイベントも

海をもっと遊ぼう

35歳にはまた南極にいたいですね。危険な目にもいろいろ遭ったけど、あのワクワクする気持ちは忘れられない。隕石を拾ってみたいんですよね〜。隕石は未知の世界から来たものだから、地球では考えられないようなことが起きるかもしれない。自分の肉体に変化が起きる可能性だってゼロではないんじゃないかと思うんです。事業の屋号にしているREMARE(リマーレ)は、リサイクルの「RE」と、イタリア語で海を意味する「MARE」を合わせたもの。海洋プラスチックゴミを減らすことだけではなく、海自体をもっと楽しみたいという願いがあります。海という素晴らしい場所を経済のためにしか使わないなんてもったいないです。

2021/11/10

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