Sustainable
Tourism

漁師と漁村
を楽しむ旅へ。

鳥羽市浦村町在住宿泊施設「Anchor.漁師の貸切アジト」代表

行野慎平 / Shinpei Yukino

profile
1985年、石川県金沢市生まれ。21歳のときに世界を放浪し、海外の魅力を感じるとともに 日本の良さを改めて実感する。2019年、鳥羽市に移住し「Anchor.漁師の貸切アジト」を立ち上げ。

さあ、世界一周の旅へ

高校生の時にやりたいことが見つからず、大学に進学するのも何か違うと感じ、高校を中退しました。とはいえタイムマシーンがあれば当時の自分に説教しに行きたいですが(笑)。その後、石川から長野に移り、花の卸売とか居酒屋とか、いくつかの仕事に就きました。しかしこの生活は一生続くのだろうか?自分がやりたいことはなんなのか?と自問自答している時に、たまたま本屋で世界一周旅行に関する本と出会い、世界一周航空券というものがあるということを知ったんです。それから180万円を貯めて、21歳のとき1年間のオープンチケットを買って、ヨーロッパ、南アメリカ、オセアニア、アジアと4大陸を旅しました。

日本ならではの魅力である漫画家を目指した時代

日本に住んでいたときは気づけていなかったのですが、旅をしていろんな文化や人、自然に触れて改めて日本に帰って来たときに、生まれ育った日本がとても魅力的な国だと感じました。そんな日本ならではの魅力的な仕事に携わりたいなと漠然と思い、絵がちょっとだけ得意だったので、帰国後無謀にも漫画家を目指しました。神奈川に住み込みの工場を見つけて、昼は働いて、夜は寮で漫画を描くという日々です。勢いで講談社に持ち込んだら担当がつき、アシスタントの仕事も紹介してもらって4年間続けたんですが、うだつが上がらず結局自分の連載にはつながらなかった。アシスタント先の先生の連載が終わった切りのいいタイミングで辞めて、北海道や東京、静岡などを転々としながら働くようになりました。

キャンブ場の立ち上げ、ゲストハウスの企画を経験

前職での経験が今に活きています。伊豆の方で秘境にあるキャンプ場の運営と、全国各地の遊休地や耕作放棄地を有効活用して地方を活性化する事業等を行っている会社に在籍していたのですが、そこで長野県と南伊豆のキャンプ場の立ち上げを経験しました。2018年には三重の伊勢志摩でゲストハウス立ち上げの担当となり、もともとは4部屋に4家族が宿泊できる施設にしたいというオーダーだったものを、あえて1日1組限定にして、まるっと1棟貸切にしてみてはどうかと提案しました。見知らぬ人同士が泊まるのではなくて、大学のサークルの団体とか、仲良しの子育てファミリー3家族とか、気兼ねなく賑やかに過ごしたい需要はあるはずだと思って。で、プロジェクトは無事完了したんですけど、この事業を伸ばしていきたい気持ちが出てきました。

漁師との出会いは、生産者と消費者をつなぎたいという思いへ

その宿泊施設の立ち上げで三重県に赴任していたときに、「地域トレーニングセンタープロジェクト」というイベントに参加するご縁がありました。地域の資産を再認識して、持続的な社会を作り出すために奮闘している人に着目する、中でも食文化を中心に地元を盛り上げるプロジェクトで、全国から集まった生産者や地域プロデューサーの方々が各地域でフィールドワークを行い、取り組んでいる活動や、地域の課題などをディスカッションするんです。そこで地元の漁師さんと知り合う機会があり、生産の現場を見たり、生産者との交流が僕にとって、とても有意義な体験だったんです。フィールドワークの最後のディスカッションで生産現場の高齢化や就労者不足などの問題を話し合っているときに「漁業や生産者に触れられる場を作りたいです!」と発言したら、シーーーーーンと場が静まりかえったんですけど(笑)、場作りを生業としていた僕にとっては生産現場を巡ったり、生産者と交流することで生産と消費の距離を縮めることができるような場作りがどうしてもやりたかった。それで三重に移住しちゃったんです。

この建物、使っていいよ

何も決めずに会社を辞めて三重県に移住してきたのですが、すぐに牡蠣の養殖をやっている漁師さんから連絡があり、雇っている方が怪我をしてしまったことから、手伝わない?と声をかけてもらいました。歓迎会では漁業カッパをプレゼントしてもらった(笑)。早速それを着て海に出るようになりました。作業をしながら漁師さんに、仲間が泊まれる1棟貸しをしたいことや、漁業や生産者に触れられる場を作りたいことを話していたら、「ここ使っていいよ」と見せてもらったのが、「Anchor.漁師の貸切アジト」の建物です。もともとは従業員寮として作られて、その後焼き牡蠣屋としても使われていたみたいなんですが、そのときは誰も使っていなくて、がらんどうで散らかっている状態でした。でも(これは行ける!ここでやろう!)と思って、2020年に施設の近くへ引っ越してきました。

天井、床、壁、家具や設備まで、絶賛リニューアル中!

古い建築なので図面もないし、工事も必要だし、宿泊の資格も取らないといけないし、やることは山のようにありました。下準備には半年くらいかかって、手を入れ出したのは屋上からですね。雨漏りがひどかったので、1〜2ヶ月くらい毎日真夏の屋上でひたすらコーティングして。漁師さんからは「慎平は今日こそ干からびるのでは」と心配されたり(笑)。内装もネットを見ながら床を貼ったり、壁を塗ったり、煙突やカウンターやらを作ったり、家具を集めたりと、クラファンも使って資金を調達しながら開業に向けて着々と進めていきました。

従業員寮、焼き牡蠣野として使われていた建物をリノベーション。目の前には穏やかな海が広がる

気の合う仲間と過ごす時間を満喫してほしい

2020年3月にオープン予定で、サイトも作って、広告も出して、集客もして、予約も入り始めたところでのコロナ禍だったんですよね。2020年4月は初めて緊急事態宣言が発令されたこともあり、みんなSTAY HOMEになって。オープン早々に休業もしましたが、そのあとは状況を見ながら運営している感じです。幸いにも1棟貸しのスタイルなので、「知らない人との接触を極力避けたい」というニーズにも応えられていて、予約はコンスタントに入っています。でもコロナ禍とは関係なく、気の合う人と仲間と同じ時間を共有して思い出を作ることは楽しいものなので、それを満喫してもらえればうれしい。ちなみにBBQはみんなやりますね。桟橋から飛び込んで泳いだり、テントサウナで熱くなったところで海に浸かったり、カヤック、サップ、ボート、釣りと思い思いに遊んでもらったり、星空を眺めてぼんやりしたり。この場所を好きになってもらって、また来てもらえることが一番うれしいです。

ここでしか味わえない体験が満載の、漁村アクティビティ

漁師さんの協力のもとで行なっているアクティビティは、「牡蠣イカダクルージング」「ワカメ刈りクルージング」「アカモク刈りクルージング」「アサリ養殖体験ツアー」「漁船フィッシング」「漁船クルージング」の6つです。実際の生産現場を体感してから食べる海産物の美味しさは感動ものですよ。アクティビティの開始前と後では参加者の表情が変わるのを何度も目にしました。あと夏季限定ですが、目の前の桟橋でやっているウミホタルツアーもほんとうにおすすめです。ウミホタルは、刺激を与えると細胞から分泌される成分が化学反応を起こして光を放つのですが、美しくて幻想的な青い光は何回見ても飽きないです。

地域の魅力を感じに来て欲しい

生産現場を巡って、普段食べている食材がどのように作られているか実際に見て、触れて、日々食材を育てている漁師さんとの交流もあって、そしてその食材を食べてみる。僕にとってはそれが原体験でもあり、感動体験だったので、興味のある方はぜひ遊びに来てほしいなーと思ってます。漁村アクティビティをたくさんの方に体験してもらうことのほかには、街づくりになるような事業にも興味があります。移住者を増やす試みとか、事業を通して結果的に地域にも貢献できたらなと。移住者ならではの視点で地域の魅力を伝えられる役割を担っていきたいです。

初心者でも気軽に楽しめるSUPも人気のアクティビティのひとつ
2021/11/10

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